きつかったり汚かったりする業務が多い仕事を、俗に3Kや4Kと呼ぶことがあります。しかし、看護師は驚きの「8K(場合によっては9Kのときも)」!命を預かる現場でありながら、夜勤や超長時間勤務の多いスーパーハードワークで、自分たちの健康さえも守れなくなることもあります。

そんな医療従事者(今回は福祉・保健も含めます)は、他業種と比べてどんな特徴がある業界なのでしょうか。

新卒の2割が医療介護の世界へ?巨大な雇用を生む業界

医療・介護に従事する者の総数はおよそ600万人。全就業者数の9%を占めています。たった9%と思うことなかれ。4番目に大きな就業者数を持つ業界なのです。

いわゆる「ヘルスケア領域」と呼ばれるこの産業において注目すべき点は、日本全体では人口≒就業者数が減少しているなかで、大きく雇用が増えていることです。介護業界だけでなく、医療においても就業者数は右肩上がりなのです。また、人口動態を見る限り、将来に向けても雇用が拡大していく領域です。

次の特徴として、高い女性比率と就労者に占める専門職の比率が高いことが挙げられます。多くの介護の職場も、そして看護師の職場も、女性の比率が9割を超えているケースが少なくありません。女性の新卒においては、新卒全体の2割がこの業界に来る計算になります。

特に医療の領域においては、就業者は非常に高い専門性と、倫理観を求められます。そのため労働条件は経済的な面に関して言えば他職種と比較して高い水準ではありますが、その多くは長時間労働と不規則労働という、厳しい労働環境を強いられています。長時間労働は離職率にも大きく影響するのは以前ご説明したとおりです。

新卒の2割がヘルスケア事業に来るというのは驚きです
新卒の2割がヘルスケア事業に来るというのは驚きです

医療系の給与をアメリカと比較すると

ここで、医療系の人材およびその他の業界の時給を、日本とアメリカで比較してみましょう。

賃金相対比較
※時給指数
日本 アメリカ
准看護師 141.0 136.3
看護師 161.3 210.4
薬剤師 168.3 344.4
医療検査技師 181.3 181.7
医師 389.9 579.5
パイロット 495.8 288.0
ホームヘルパー 97.7 76.9
栄養士 116.8 139.5
高校教員 276.5 171.7
自動車組立工 149.7 147.1

※出典:賃金構造基本統計調査(厚生労働省)

医療職は、社会的評価やその技能・技術の難易度、教育訓練の水準が同程度と考えられる他職種と比較すると、給与水準が決して高くないことがわかります(低い、とすら言えるかもしれません)。看護師や薬剤師といった高い技能を必要とされる職業であっても、高校教師と比較して、大きく見劣りします。最も給与の高い医師であっても、パイロットの8割以下となっています。

アメリカの医療系職業は全般的に日本より高くなっており、日本において医療系職業の経済的評価が見劣りしていることが一目でわかります。

medical-team

やっぱり厳しい労働環境

医療従事者の労働環境は、准看護師制度の下、「御礼奉公」が行われ、結婚などを理由に退職を勧められる「退職慣行」など、女性特有の職場ならではの習慣が当たり前に行われていた時代がありました。患者の命に深くかかわる職業だからこそモラルがより厳しく問われるのですが、一方で病院自らは労働基準法を守っていないケースが多々見受けられます。

また、民間病院では労働組合のない施設が多く、就業規則の整備をはじめ人的資源管理には幅広く、かつ深い問題が多数存在しています。

例えば2009年度、労働基準監督署が労働基準法違反などで是正勧告を行った病院・診療所などの事業所数は1,216件。そのうち、労働時間が781件と最も多く、時間外労働などに対する割増賃金が540件、就業規則390件と続きます。中には「賃金不払い」が72件あるなど、見過ごせないものが多くありました。

厳しい労働条件に悩まされる看護師が多い
厳しい労働条件に悩まされる看護師が多い

当たり前?やっぱり人材が足りてない!

給与が(アメリカと比較して)安い、労働環境も厳しい…となれば当たり前のような気もしますが、医療系人材はどこも足りていません。

今までは医師をはじめとする医療系人材は、大学から輩出され、その斡旋・仲介を含めた人事系の機能もまた大学が果たしてきました。しかし、若手医師の博士号離れ、専門医志向が進み、一方で大学病院の経営改善で医局と別に診療部制を敷く大学が増え、新臨床研修制度、さらには国立大学は独立行政法人化をするに至りました。結果、大学の医局が人事権を持って強い影響力を持つことは不可能になったと言えるでしょう。

TokyoUniversity-ForegnStudies

今後業界としては是正が進み「働きやすい職場」に

今まで医療業界は「閉じたマーケット」だったと言えます。大学の医局が絶大な権力を持ち、外からは何をしているのかよくわからない。異業種からの転職者も少なく発言権も低かったため、ガラパゴス化していても自浄作用が働かなかったからです。

それが、現在は人材不足、さらなる需要の拡大などを受け、労働環境を整えていこうという圧力が厚生労働省はじめ、行政からも非常に強くかかっています。病院経営者も、「労働環境を整えないと人が採れない」ということを理解している人が増えてきたように思います。

今後、医療業界は給与面でも、労働環境面でも、働きやすさの面から是正が進むことでしょう。市場自体も拡大するこの業界であなたらしいキャリアプランを描いてみてください。

桑原 誠二
Author

コメディカル、介護職員に特化した人材エージェント勤務。元はケアマネージャーとして介護施設で6年の経験あり。医療、介護人材が、転職によってよい人生を歩めるようにするために日々奮闘中。