不足感ばかりが強調される医療分野における人材ですが、その課題を把握するためには現状を正しく認識することからスタートするべきでしょう。本当に人材は不足しているのか、その裏側にある課題は何なのか、リサーチしてみました。まずは国内の事情からみていきましょう。

巨大な雇用を支える女性と専門職

医療福祉保健分野の労働者数はおよそ600万人、全労働者の9%を占めます。内訳としては保健が10万人、福祉が270万人、医療が320万人です。この3分野は中分類によると、4番目に大きな分野で、非常に巨大な雇用を生み出している産業であるといえます。また、2002年から2008年の6年間に1.3倍伸びており、これはサービス業に次いで2位という高水準の伸びです。介護の伸びが1.48倍と著しいものの、医療の伸びも1.08倍と、平均よりは高い数字です。

女性の割合は医療業界は73%、介護業界が79%と、ともに他業種と比較してきわめて高くなっています。全産業の平均では女性の比率は42%。たとえば製造業では31%ですので、その高さは一目瞭然です。

また、専門職、いわゆる「手に職」の割合も非常に高いのが特徴です。専門技術者の割合が医療業界では73%と、全職種15%、製造業7%と比較して圧倒的に高いのです。福祉介護の業界も35%と、医療と比較すると劣るものの、かなり高い数値になっています。

手に職がある、という強みがあり、女性と専門職の割合が高い医療業界
手に職がある、という強みがあり、女性と専門職の割合が高い医療業界

ますます増える「医療介護人材」の割合…すでに新就業者数の10%を超えている

医療系の専門職になるには、専門学校や大学などで、2~6年ほど学ぶ必要があります。さらに卒業後にも国家試験などを経て免許を取得しなければ現場に出られません。また、サービスを受ける側の患者との間には情報格差が強く、その影響が生命、身体に及ぶことから、高い倫理性が要求されます。

そういった教育機関を経て卒業する人数は、全産業でおよそ100万人のうち、男性3万人、女性8万人と合計で11万人を占めています。今後は人口減少とともに全産業の就業者数が減ることに対し、医療介護領域の人材はますます増えるとされているため、その割合はさらに大きくなっていくでしょう。

非常に人気が高く、全産業中4位の人口を誇る
非常に人気が高く、全産業中4位の人口を誇る

現在の人数とその内訳は?

医療専門職は210万~240万人ほどいるとされています。その中でも最も多いのが看護師の88万人、准看護師の38万人で、全体のおよそ半数を占めます。次いで医師が29万人、薬剤師7万人、歯科医10万人となっています。薬剤師はおもとして企業に就職。歯科医師は歯科診療所に、医師は7割が病院に、3割が診療所に勤務しています。

この巨大産業の労働条件はどうなっているのか

医療専門職と同様の特性を持った職業に、教育職などがありますが、医療であれ教育であれ、それぞれにふさわしい賃金・労働条件が得られ、かつ社会的に適切な評価を受けることが必要です。以前時給指数をアメリカと比較した記事でご紹介した通り、日本での医療系人材は相対的に給料が低いといえます。この経済的な評価は、社会的な評価とある程度関連しているとみられますので、日本の医療系人材はアメリカのそれと比較すると冷遇されている、今後ますます改善が必要だ、といえます。

医療人材の過不足、国際的に見てみよう

アメリカだけでなく、より国際的に見てみましょう。

日本の医師や看護師のうち、外国人が占める割合はほかの先進国と比較してきわめて低いです。政府主導で東南アジア各国、インドネシア、タイ、フィリピンなどから看護師を招く動きがありましたが、語学の壁が厚く、現状はうまくいっているとは言えないでしょう。

OECD Health Dataを用いて各職種の国際比較を行うと、保健医療人材全体としては26か国中16位と中の下という水準です。医師は25か国中23位と、最下位に近くなっています。一方で歯科医師は17か国中6位、薬剤師は18か国中1位。看護師は19か国中6位と、これらの有資格者についてはそれほど悪くない状態です。

しかし病院医は25か国中20位、人口当たり患者数は32か国中28位、さらに外来回数は世界一、病床数も世界一と、医師の不足が社会全体の課題であることが浮き彫りになります。

日本で医師や看護師が不足しているように見えるものの、日本は長期ケアの病院が多いなどの事情もあり、一概に言えない部分もあります。しかし、諸外国と日本の明らかな違いは、非看護師の職員の数です。日本は、非看護師職員が圧倒的に少なく、それが医師、看護師の業務を逼迫させているといえるでしょう。

桑原 誠二
Author

コメディカル、介護職員に特化した人材エージェント勤務。元はケアマネージャーとして介護施設で6年の経験あり。医療、介護人材が、転職によってよい人生を歩めるようにするために日々奮闘中。