厚生労働省の医療施設調査の結果が、2016年9月6日、新たに発表されました。開業や廃業の推移はどうなっているのか?地域や診療科で売上や利益に差はあるのか?

今回は病院と歯科医院を除いた、クリニックの開業・廃業状況についてご紹介します。

予測よりも低い伸び率、クリニック開業は高止まり?

2000年あたりから開業ブームが始まり、当時は「2007年にはクリニックの件数は10万件を超えるだろう」と見られていました。しかし2007年の診療所の件数は99,532件と僅かに届かず。そこから先も件数は伸び悩み、ようやく10万件を超えたのは5年後の2012年のことでした。2012年に100,152件になったクリニックの件数は、最新調査の2015年で100,995件と、緩やかに伸びています。毎年1,000件もの伸びを見せていた2000年前後と比較すると、かなり緩やかになったと言えるでしょう。

クリニックの件数が伸びない原因は「開業が減った」からではなかった

クリニックの伸びが鈍化したのは、2つの要因が考えられます。

①開業する医師が減った
②廃業するクリニックが増えた

厚生労働省のデータを見ると、要因が明らかになってきます。下記が、開業と廃業の件数の年次推移です。

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1990年代、クリニックの開業数は3,700件/年ほどでした。それが2000年代前半、5,000件/年を超えるようになります。2006年以降もおよそ5,000件/年の開業数で推移していることがグラフからわかります。

開業件数が高い数値で推移しているのに、クリニック全体の数が横ばい傾向なのは、廃業が増えたからだと言えるでしょう。1990年代後半から2000年代前半に3,700件/年ほどだった廃業件数は、2000年代後半には4,800件/年に増加。廃業件数は更に増え、2010年代はおよそ5,800件/年にまで増えているのです。

2000年代前半に5,000件で高止まりした開業件数に対し、2005年あたりから廃業件数は増え続け、結果的にクリニックの数は横ばいになりました。

クリニックの「倒産」は超少数、ほとんどが高齢化による承継問題か

ではなぜ廃業したり休止したりするクリニックが増えているのでしょうか。帝国データバンクのデータから読み解いてみましょう。
帝国データバンクによると、医療機関(病院・クリニック・歯科診療所)の倒産件数は、毎年20~50件ほどで推移しています(下図)。

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そのうちの6割ほどをクリニックが占めていると見られ、診療所の倒産は12~30件/年ほどであると考えられます。毎年廃業している5,000件前後のクリニックのうち、0.004%ほどです。経営されている約10万件のクリニックを分母に考えると、その割合は0.0002%と、非常に少ないことがわかります。おそらく、ごく一部がいわゆる「倒産」による廃業で、その他の99%以上は高齢化によって後継者がいないことや、経営の統廃合が要因ではないかと考えられます。

事実、厚生労働省も資料の中で下記のように述べています。

医療法人等の倒産件数(民事再生と破産の合計)は年度によって差はあるものの、過去 10 年間の平均は9件に過ぎず、6,000 を超える医療法人・個人立病院数に比すると微々たる件数である。

どこで開業しますか?地域によって異なるクリニック数

開業する際の土地選びとして、多くの医師が「地元」を選ぶ傾向があります。倒産が少ないとはいえ、医療機関の経営は「依然厳しい」とも言われている環境下ですので、本来は経営やマーケティングの視点から土地選びをするべきでしょう。

一般的に医療は「西高東低」の傾向が顕著で、関東は病院、クリニックが少なく、関西はその逆であるケースがよく見受けられます。また、都市部には病院、クリニックが多く、郊外や地方はその逆であることが多くなっています。事実、関東では人口あたりのクリニックの数は東京都以外の全県で平均を大きく下回っていますが、関西圏は平均を大きく上回っており、例えば和歌山県は埼玉県や千葉県の倍近い数のクリニックが存在しています(同人口あたり)。

同じく、中国地方、四国地方、九州地方も、沖縄を除く全ての県で人口あたりのクリニック数は平均を上回っています。

診療科で異なる売上、利益、患者数

何科として開業するのかも非常に大きなテーマです。既に専門医になってしまっている先生には遅い情報かもしれませんが、経営のご参考に。学生で将来的に開業を志す方には診療科選びの参考になるかもしれません。

下記は、厚生労働省平成17年度調査、無床診療所(個人経営)の一ヶ月あたりの売上、経費、利益の診療科別のグラフです。※いわゆる「院長の給与」は経費には含まれていません。利益が、院長の給与および内部留保に充てられているものと考えられます。

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売上が最も高いのは外科ですが、利益率が最も高いのは精神科で59%という結果に。皮膚科医も利益率は高く、45%を超えます。逆に利益率に関しては外科が28%と最下位になりました。

産婦人科は売上も利益も小さいように見えますが、利益率はおよそ35%で、全体平均とほぼ同水準です。

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臨床にいる医師で独立開業を目指す方の割合は高いように感じます。しかし、倒産件数が少ないからと安易な開業をするのではなく、どこの地域で、どの診療科で開業するのか、経営・マーケティングの視点を持って慎重に判断してください。

桑原 誠二
Author

コメディカル、介護職員に特化した人材エージェント勤務。元はケアマネージャーとして介護施設で6年の経験あり。医療、介護人材が、転職によってよい人生を歩めるようにするために日々奮闘中。